相手の不足や課題を解決しようとするのであれば、相手の味方になって取り組まなくてはならない。
自分に置き換えればすぐに分かることだ。
敵から指摘されたところで、改善が図られるかというとそうではない。
相手の隣に座って、同じ方向を向き、どんな思いでその状況に至ったのかを認め、耳を傾けなければ、相手がこちらに協力することがあるわけがない。
だから、相手に敵と見られてはならない。
「私はあなたの最大の味方であり、最大の理解者である」というメッセージを伝える必要がある。
注意や指摘というのは、相手に敵だと認識されやすい。
人には少なからず、「自己奉仕バイアス」という思考の偏りを持っていると言われている。
相手が問題が起こした場合は、その人のせいにし、自分が問題に関わると、他責や環境のせいにするという心理だ。
Aさんがコップを落として、割ってしまった。
「Aさんはドジなところがある」と指摘する。
後日、Aさんの前で、あなたはコップを落としてしまった。
すると、「机の端にコップが置いてあったから」と指摘する。
そのように、人は、自分に都合よく問題を捉え、自分以外の人間や環境のせいにする心理が備わっているのだ。
だからこそ、注意指摘だけでは相手には響かないのだ。
相手は「その状況を良し」と思いたい。こちらは、「相手の問題として捉えたい」と感じているからだ。
繰り返すが、相手にとって敵であってはならない。最大の味方、理解者になり、「こういう風に感じているけど、どう思いますか?」と相手の心情に寄り添わなければならない。
従来の注意指摘はいらない。むしろ、防衛本能により相手の意見を強固にさせるだけだ。
Aさんには、コップを置く位置をどこにすればみんなコップを落さないか、アイデアを出し合いましょう。と伝え、
私がコップを落としてしまったら、自分の不注意ですみません。次回、このようなことがないように、コップを置く位置をどこにすれば良いか考えたいので意見をいただけますでしょうか。と伝える。
相手が気持ちよく、楽しく、幸せな心になるかを考えることが、徳を積んで生きることにつながる。
相手が不快で、不安で、不幸になるような言葉をかけ、気分を落としていないか、今一度、自己奉仕バイアスを外して、自問自答したい。