スモールステップで支援する「子どもの苦手」

自閉症の子どもたちや、発達に特性を持っている子どもたちは「白ごはんしか食べない」「揚げ物しか食べない」など、「偏食」が多くみられます。特性を持っている子どもたちに限らず、子育てをする上で「偏食」で悩まれる親御さんは多くいらっしゃるように思います。その要因は、口腔内の感覚過敏や、同じものへのこだわりや変化に対する不安等、子どもによってそれぞれ異なると言われています。

その「偏食」に対して、全力で取り組まれている広島市にある「こども療育センター『なぎさ園』」に職員(スタジオ職員・調理職員)と共に視察に行ってまいりました。なぎさ園さんでは、毎日通園する子どもたちの給食の場面で、栄養士の藤井葉子先生を中心に調理員・保育士・言語聴覚士等様々なスタッフが自閉症の食の課題に取り組まれています。「子どもたちは揚げ物の端っこを食べている。ハンバーグをカリカリに焼いて子どもの好みにしてみては?」「千切りだと食べる?」といった子どもの観察と気づきから、様々なチャレンジを行い、口腔感覚対応食を作り、子どもたちに提供され、効果を上げられています。卒園時(小学校入学前)までには偏食がほぼゼロになっていくと言います。子どもたちの発達や摂食の傾向を細かく分析することで、偏食の過程に一定の傾向があることが分かり、「偏食改善」に大きく貢献されています。

少し具体的にお話すると、例えば「にんじん」を食べれない子どもがいる際には、その子は「味」が嫌いなのか、それとも「色」なのか、「匂い」なのか、「固さ」なのかなどを様々な視点から分析し、その子の偏りをチェックします。

その上で、その子が食べやすい状態にして提供してみることをスモールステップで進めます。ペースト状だったら食べるのか、油で揚げると食べるのか、刻んであげると食べるのか、そして、ヒットした調理法で美味しく食べることをまず進めていきます。食べる際には、目の前にある食材が同じものである(「揚げたにんじん」が好きであれば、目の前の「茹でたにんじん」が同じものである)ということを丁寧に伝えてあげることで、美味しく食べた「揚げたにんじん」は、目の前の「茹でたにんじん」と同じものであることを少しずつ学んでいきます。そういうステップを少しずつ進めることで偏食を減らしていくわけです。栄養士の藤井先生は嫌いなもの(例えば野菜など)を「カレーに混ぜる」とか、「白ごはんに混ぜる」とか、そういう「子どもを騙す方法」では偏食は治らないと断言されています。

スモールステップで成長するというのは「食」に限ったことだけではありません。「泳ぐ」という成長においても、いきなり海に投げ込まれても水に対して恐怖を抱くだけです。水を触ったり、水の気持ちよさを感じたり、水の楽しさを感じたりする経験を通じて、少しずつ水に対する恐怖感を無くし(若しくは恐怖感を持たせずに)、泳げるように成長していくのだと思います。

子どもにすぐにゴールを求めたり、大きな成長、結果を求めてしまうことは、保育者や親も往々にしてあることと思います。なぎさ園さんの「偏食」への取り組み姿勢を通して、子どもたちの成長を促す大きなヒントを学ばせていただきました。スモールステップで子どもたちの苦手なことに対しても、改善が図れるよう精一杯サポートしてまいりたいと思います。

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