佐賀新聞「ニュースこの人」

児童発達支援施設「おへそこどもスタジオ」を開設した、吉村直記さん(32)

 -運営する社会福祉法人みずものがたりの認定こども園「おへそこども園」の隣接地に今年4月、発達障害などがある未就学児の療育に取り組む「おへそこどもスタジオ」を開設した。

 異なることではなく、開設は延長線上にあったこと。こども園をやる中で、集団生活になじめず、サポートが要る子がいるのに、一人一人に専門的な対応や支援はできずにいた。発達支援分野で専門に働きたいという人材を得るためにも立ち上げが必要になった。

 -いわゆる通常の保育園・幼稚園と、こどもスタジオで過ごす子どもたちの違いはどこにあるのか。

 未就学児は食事、トイレ、人間関係、脱ぎ着という身辺自立を身に付ける。こどもスタジオは一日10人の定員に対し、スタッフは常時5人つく。たとえば友達の物を本能のままに奪い取ったとき、注意だけで終わらせず、そこで時間を止めて「そんな時は『貸して』と言うんだよ」と伝達することができる。言葉が未発達な子なら、先生を呼んだり、思いを記したカードを使って伝える方法でもいい。要は、その子が豊かな人生を送るため、一人一人に合わせたトレーニングができる。苦手な食べ物も、細かく刻むとか工夫することでレッスンができる。

 -施設の利用対象は、幼くして発達障害の診断などを受けた子どもたち。訪れる保護者は戸惑いを抱えているケースも多い。

 保護者は子どもに「レッテルを貼られた」ように感じているが、私は「決してそうは思わない」と言う。学校だけで勉強ができる子もいれば、塾で伸びる子、家庭教師がいい子、通信講座がいい子もいる。ちょっと置き換えただけでも学び方は多様にある。ここでは決まった形じゃなく、方法を選んでやる。利用者の垣根を低くという訳ではないが、施設名は習い事、レッスンスタジオのような名前にした。家族や周囲には発達支援施設とか言わず、「おへそに行ってる」と言ってくれればいい。

 -吉村園長の教育観には、幼少期から教わった故・古賀武夫さんの影響が根底にあると言う。

 空手を学び、英語を学び、一緒に海外に行き、先生の影響で留学もした。集団の中で均一化させ、違いを排除する傾向が強い日本こそ、世界から見れば特異な存在。世の中には多様な価値観があり、人間はそれぞれ違いがあって、それがあるから面白いと先生のおかげで根っから思う。

 放課後学童クラブもあるのでグループには0歳から12歳までが出入りする。こどもスタジオとこども園の子は共用の園庭で一緒に遊ぶ。地域の人もかかわってくれる。ごちゃまぜで、多様性ある環境ができたと感じている。自分も職員も子どもたちも「いいとこ取り」をしながら、ともに学び、成長できる場にしたい。

 今後の目標をよく聞かれるが、今、目の前でやっていることで120%なので、うまく答えられない。もし挙げるとしたら、ここで育った子が成長したらツアーを組んで一緒に海外に行き、帰って来たい。自分がそうしてもらったように。

 よしむら・なおき 佐賀北高-日本体育大学卒。5歳時から古賀道場(佐賀市)で学び、高校3年時にメキシコに留学。大学在学中に幼児教育に興味を持ち、保育コンサル会社に入社。2011年、25歳でおへそ保育園(同市)園長。こども園、放課後学童クラブ、発達支援施設など社会福祉法人みずものがたり〝おへそグループ〟を統括する。佐賀市

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