インストラクショナルデザイン(教え方のデザイン)とアドラー心理学の専門である早稲田大学教育学教授 向後千晴氏による「教える技術」の教科書です。
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ー「教えたのにできない」のは100%教える人の責任
教えられる人にやる気がないなら、やる気を起こさせるところから教える人の責任範囲。
1、教える相手をよく観察して相手の状況をつかむ
2、相手の状況に沿って、ちょうど良い知識を提供できる
3、相手に実践の機会を与えて、結果をフィードバックする
このように伝えていくことは、教え方が上手になるだけではなく、コミュニケーション、人間関係も良好になる。
例えば「もっと素直な人になってほしい」といった相手への願望はうまくいかない。
変化できるのは相手ではなく自分。
上手に教えるためには、相手の「心」ではなく、「行動」を変える。
「素直な人になってほしい」→「すぐに『ありがとう』と言える」
「人を思いやる気持ちを持ってほしい」→「電車にお年寄りが乗ってきたら、席を譲る」
「計画性を養ってほしい」→「手帳をつけてスケジュール管理ができる」
「気が利く人になってほしい」→「お客様が来たらすぐにお茶を出せる」
「効率良く仕事をしてほしい」→「仕事は納期の2日前までに終わらせる」
と、何かができるようになることが「学んだ」と言える。
ーやさしいステップから教える
スキーがすべれるようになりたいなら、まず斜面を滑る前に平らな雪の上でスキー板をつけて歩く練習から始める。最初はやさしすぎるくらいのステップからスタート。入門段階では失敗させる必要はない。小さなステップを踏むことで、恐怖心がなくなる。
恐怖心がなくなれば、失敗する準備ができる。少しずつ少しずつ、より複雑で難しいステップに進む。これを「スモールステップの原則」という。
ーフィードバックで相手のやる気を刺激する
相手をよく観察し、もしうまくいったらすぐに「うまくいっていたよ」と声をかける。これを「即時フィードバック」と呼ぶ。何か一緒懸命練習していて、それができたときに「できたね!」と声をかけられたらうれしくなる。やる気も出る。そして、よく観察してくれているというメッセージとなり信頼関係ができていく。
あてておおげさに褒めないことも大切である。褒められ続けると失敗することを恐れるようになる。
ーもちろん叱らない
叱るのではなく、「今のはうまくできなかったね。どこが難しかった?」とフィードバックする。「なんでできないの?」「そんなこともできないのか!」という台詞は、「ああ、こんなに頑張っても、やっぱり自分にはできないんだ(=無力)」という気持ちを学習してしまう。そんなあなたに教える資格はありません。叱られるべきなのは、スモールステップをうまく指示できなかった、教える人のほうである。
ー丸投げやほったらかしにしたら自立は遠のく
「教えること」の最終目標は、「相手が自立してできるようになること」。逆に言えば相手が自立するまでは、あなたの仕事は終わっていない。相手が少し上達すると、安心し、「あとは自分でできるよね」と言って、相手に任せてしまうことがある。これは教える側の責任放棄。教えられる側が「ありがとう、もう一人でできます」と宣言するまでは、教える仕事は終わっていない。
ー教えることであなた自身が成長する
教えるということは自分も深く学ぶということ。教えることで新しい学び方を発見できる。上手に教えられるようになれば、信頼される人になる。教えることの工夫はクリエイティブで、教え方、学び方次第で、何倍も速く学ぶことができる。その手助けをすることは、双方の喜びである。
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「教える」とは「伝える」ことではなく、相手は「分かる」「できる」ようになること。
相手が行動したり、納得できないのは、こちらのアプローチ、教え方の不足。
教える側の責任が100%という前提に立つことから「教える」は始まると改めて痛感させられる本です。