教師の禁句「静かにしなさい!」

1906年生まれ、2005年没。50年以上、教師としてユニークな指導で、生徒を授業に熱中させた大村はま先生の著書「教えるということ」から。

「静かにしなさい!」
子どもがよく聞いていないと「よく聞いていなさい!」「静かにしなさい!」というせりふがあります。これを御法度にしたらよいのではないかと思います。
戦後、ノートなし、鉛筆なし、教科書なしの学校に赴任。「教室がないから、2クラス100人一緒に授業をしてください」と言われ、途方にくれました。子どもたちがワアワア騒ぐ中、教室の隅にしばらく立ち尽くしていました。
その後、新聞や雑誌などから教材になるものを引き出し、子どもたちのレベルに合わせ100通りの教材を作った。翌日それを持って教室に行き、子ども一人ずつわたしていきました。すると、食いつくように勉強をし始めたのです。
子どもというものは、「与えられた教材が自分に合っていればこんな姿になるんだな」ということが分かりました。
みんながしいーんとなって床の上でうずくまったり、窓わくのところへ寄りかかったり、いろいんな格好をして勉強しているのを見ながら、隣の部屋に行って思いっきり泣いてしまいました。子どもたちを生かすことができないのは全くの教師の力の不足に過ぎないということがわかりました。
「静かにしなさい!」という言葉は、心に冷たい涙を流し、慚愧(ざんき)にたえぬ思いであり、子どもたちを静かにする案も持てなかったし、対策ができない、万策つきて、敗北のかたちで「静かにしなさい」という文句を言うということです。
子どもが悪者だというような顔をしてこちらから言うなどということは、私はとんでもないことだという気がします。

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